すべての創作は"編集(アレンジ)"である 『図書館警察 Four Past Midnight Ⅱ』スティーヴン・キング 周回遅れの文庫Rock

昨年の春に導入した「サイコロ読書法」を続けていなければ

十中八九、"積読山脈"の奥深くに埋もれたまま手に取ることはなかっただろう。

ちなみに奥付を見ると、1999年8月の第1刷。

実に20年以上もの長きに渡り、〈ベンチ〉に座らせていたことになる。

これでは、とても「デビュー当時からキングのファンだった」とは、言えないなぁ。

 

たけど、おかげで、いろいろなことに気づくことができた。

 

 なにより大きかったのは、近年の「ベストセラー」との違いだ。

若い人が書いた作品ほど(偏見かもしれない)

全体の構成やストーリーの展開に、強い〈デジャブ感〉を抱いてしまうのだ。

例えば。――こういう伏線の張り方って、絶対どこかで読んだぜ.。

とか。――気持ちいいどんでん返しだったけど、✕✕✕✕とおんなじじゃね?

みたいに、《以前読んだ小説との共通点》を探している自分に気づく。

 

実際、このブログを書き初めて以来

「心から面白い!と思った作品だけ取り上よう」

みたいなシバリをかけたのだが

世代差が大きくなるほど、〈仕掛け〉とか〈技〉ばかりが引っ掛かり

結果的に、小説そのものが楽しめない状態が続いている。

果てしてこれは、書き手側の"オリジナリティ欠如"の問題

――〈創作からアレンジ(パクリとも言う))へとスライドした音楽業界と

同じ現象――が常態化しつつあるのか。

はたまた、加齢とともに進行悪化する認知症の如く

単に読者(オッサン)の感性がすり減ってしまったのか。

いずれにせよ、あまり嬉しい変化ではない。

 

それにしても、なんでこんな本作とは無関係な話を長々と続けたのか。

・・というと。

巻末に添えられた、翻訳者(2名)と装丁者の鼎談「あとがきに代えて」のなかに

上に並べた〈デジャブ感〉をズバリと射貫く一文に、出逢ってしまったからだ。

 ※「ランゴリアーズ』と『図書館警察』の装丁者・藤田新策さんの発言。

藤田 要するに、完全なるオリジナリティというものは、もはや存在しないんです。

だれだれの影響を受けた、いただいた、パクった、剽窃(ひょうせつ)した‥‥だんだん表現がきつくなっていくんだけど、じつはみんなおなじことではないか。これは建築家の磯崎新氏の言葉なんですが、「クリエート(創造する)という人は信用しない」と。「ではあなたはご自分の仕事をどう表現しますか?」ときかれて、磯崎氏は「エディット(編集する)だ」と答えているんです、うろ覚えですが。〈中略〉

現代のオリジナリティというのは、既成のものを編集するセンスのことなのではないかと思うんです。音楽の世界が好例でしょう。       (688~689ページ)

 

ははは。ど真ん中のストレートで言われちまった。

しかもこの鼎談、1996年8月(日本語版の単行本)に行なわれたヤツだから

ほぼ四半世紀前も昔に発表された、歌で言えば〈ナツメロ級〉の年代もの。

「近頃の若い作家は・・」なんてふんぞり返っていたアホなオッサンに

渾身の32文キックで突っ込んでやりたいわ。

 

ま、早い話。

創作やら芸術やら「クリエイティブ」の座に祀り上げられていた

文学・音楽・美術もろもろにしたところで

あくまでもメイン(中心)となるのは、科学技術と同様〈継承と蓄積〉。

その上に、次の世代が「個性」という色を乗せて積み重ねていくものなのだろう。

 

てなわけで、書評どころか感想文にもならぬまま終わりそうなので

最後のちょっとだけ、本書の読後感を、殴り書き。

 

スティーヴン・キングと言えば

「ホラー」だったり「ダークファンタジー」だったり

型にハマった捉え方しかやってこなかったけど

今回読んでいるうち、2つのこっ恥ずかしい言葉が浮かび上がってきた。

それは――『勇気』と『愛』。(勇気が前で、愛は後ろ)

 

ある日、作中人物たちの前に、強大な「試練」が立ちはだかる。

『勇気』と『愛』を両手に携え、いかにしてその「試練」を乗り越えるか。

(あるいは、両方欠けているため、乗り越えられず終わってしまうか)

めちゃくちゃ乱暴な決めつけかもしれないけど

スティーヴン・キングの小説は、このせめぎ合いの繰り返しだと思ったりする。

少なくともオッサンの場合

『勇気』と『愛」を心に留めながら読んでみたら

固有名詞や商品名をはじめディテールでてんこ盛りの〈キング節〉も

胃もたれすることなく、スルスルッといただけたのだった。

 

ともあれ、昨年春の文庫本整理で

キングの未読作が30冊以上(文庫)あることが判明した。

時間順に読んでいく予定だが

果たして現時点での最新作「ファインダーズ・キーパーズ」にすら

命あるうちにたどりつけるのどうか。

せいぜい、健康管理を心がけることにしよう。

 

ではでは、またね。