"乗馬天国"と"丸焼き地獄" キューバふたり旅 2020.2.26-3.5 4日目(その2)

2020年2月29日(土) トリニダー&近郊

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思わずビビッた〈ブタの丸焼き〉

カポカポ蹄鉄?の音を鳴らしながら

丸石で凸凹する石畳道を、小走りする程度のスピードで進んでいく。

あまり経験したことのない視野の高さに、軽い優越感を覚える。

大型トラックなど車高の高い車のドライバーも、同じような気分なのかもしれない。

 

当初心配したほど、手綱の扱いも難しくなさそうだ。

たとえこちらが初心者でも、馬のほうが「プロ」だから

慌てて急な操作さえしなければ、即座にこちらの意図を察して動いてくれる。

軽く手綱を左右に傾けるだけで進行方向が変わり

手前に引き寄せれば、歩みを緩めてくれる。

そのたび、「サンキュー!」「よーしよし!」などと、声をかけてしまう。

気が付けば、いっばしのカウボーイ気分.。

自分一人で馬に乗るのが、こんなに面白いとは!

 

その間にも、ガイドの馬を先頭に、我ら3頭はパカポコ緩い坂道を降りていく。

さらに、町はずれから郊外へと続く砂利道へ。

急な坂道にさしかかるところだけは(安全のため)いったん馬を降りたが

それ以外は。畑や荒野の間を伸びる土の道を、どこまでも進んでいく。

ホントに2人だけの貸し切りツアーだった。

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           賢くて大人しい馬たちだった・・

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          サトウキビ搾りのパフォーマンス

こうして、ときどきギャロップになりかける馬を抑えたり

逆に、踵の内側で軽く叩いてスピードアップをうながしたり

思ったよりもずっと快適に乗りこなしつつ、平坦な道を進むこと、およそ1時間。

右手に、バンガロー風の飲食店(小屋)が見えてきた。

その脇にあるスペースに馬を停めて、ひと休み。

入口近くの作業場で、サトウキビジュースを絞る実演をやってくれるという。

もちろん、ジュースを買わないと見せてくれない。

1杯2CUCだというので、せっかくだから1杯だけ注文する。

万力のような器具にサトウキビを突っ込み、男が二人がかりで樹液を絞り出す。

味は・・まあ、素朴、かな。うっすら甘いだけ。

 

ふと、脇の小屋(ほったて)を見ると、

すっかり火の消えたバーベキュースペースに、干からびた豚の丸焼きが。

・・まさかこれが、俺たちのランチ?

どう見ても、何時間も前に焼いたままほったらかしの雰囲気。

だとしたら、ちょっとヤバいんじゃいかな・・

衛生観念のカケラもなさそうな光景に、不安がこみあげてきた。

――残念ながら、その予測はズバリ的中するのだった。

 

ともあれ、30分ほどで小休止は終了。

再び、それぞれの愛馬にまたがり、出発進行。

初夏を思わせる陽射を浴び、のどかな農村風景や小高い丘を眺めながら

さらに1時間ほど、ポコポコ歩く歩く。

やがて、進行方向に農場の周りに見かける木製の囲いが見えてきた。

先頭を行くガイドの馬は、そのまま囲いの中へ。

農場の中に入っていくの?

と思ったら、その先に開けた場所があり、十数頭の馬がたたずんでいる。

どうやらここが、乗馬の終点らしい。

 

先に降りたガイドの手を借りて、我らも下馬。

そのままガイドの先導で、谷合いを流れる小川に沿った道を上り始めた。

10分ほど登ったところの茶店?で、ガイドは立ち止まり

「この先をずっと歩いて行け」とジェスチャーを交えて指示される。

言われるまま、川に沿って続くゆるい上り坂を歩く。

多くの観光客が訪れる場所らしく、何組ものツアー客と行き違う。

そんななか、どこか懐かしい顔だな・・と思ったら「こんにちわ!」の声。

日本人の若い男性グループだった。

年恰好と時期を考えると、大学の卒業旅行なのだろう。

実は、行きの飛行機で一緒だった団体客以外、

今回の旅で、初めて出逢う日本人だった。

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滝壺は観光客のパラダイス

木々に囲まれた渓流の道を歩くこと、およそ15分。

着いたところは、滝壺・・を利用した、天然プールみたいなスペース。

50名ほどだろうか、水着姿だったり上半身裸の若者たちが

泳いだり飛び込んだり日光浴したりと、思い思いに楽しんでいた。

どうやら、昨日ホテルで聞いたツアーと、まったく同じ内容だったらしい。

・・てことは、やっぱりボラれていたんだな。

ま、過ぎたことはしょうがない。

実際、予想以上の乗馬体験だったのだから。

 

ふたりとも泳ぐ気はまったくなかったので、木陰の岩に腰を下ろし

風に吹かれてのんびり過ごすことに。

奇声をあげて滝壺に飛び込む勇者のなかには、

さっき挨拶を交わした、日本の男の子たちの姿もあった。

最近、海外旅行先で見かける若者の多くが女性のグループばかりだったので

元気な野郎どもの遊びっぷりが、なんだか嬉しい。

 

30分ほどで立ち上がり、来た道を戻る。

行きと同じではつまらないので、今度は川床に降りて

乾いた石伝いに歩いていくことに。

途中見かけた、野鳥に彼らのレンズを向けながら

ゆっくりのんびり、馬を停めた場所めざして進んでいった。

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にわか「バードウォッチング」

途中、ちょっと迷いかけたものの、無事ガイドと合流。

大人しく休んでいた馬に乗って、来た道をトコトコ戻っていく。

で、予想通り、往路に立ち寄った店でランチタイム。

ランチと言っても、サラダとメインディッシュだけのシンプルなもの。

当然、飲み物は別料金だ。

"メインはポークかチキンのどちらかを選べる"、と店員が言うので

さっき見た丸焼きに不安を抱いていたので、迷わず「チキン」をチョイス。

相方は、「ポーク」。

一瞬、〈豚の丸焼き〉のことを伝えようかと思ったが

しばしば旅先でお腹を壊す私とは対照的に

彼女は、ほぼノーチェックで快適な食生活を満喫できている。

実際、私がトイレに直行する料理と同じものを口にしても、ケロリなのだ。

そんなわけで、"俺はダメでも相方だったら大丈夫だろう "と判断。

わざわざ口を挟まず、ここは様子を見ることにした。

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愛馬?も、心配そうに見守っていた

さて、ランチの始まり。

小さなお椀に入ったサラダに続いて、出て来たメインディッシュは・・

パッサパサの骨付きチキンと、これまたジューシーとには程遠い豚肉スライス。

もちろん、味は、予想通り。というか、予想以下の不味さ。

ふたりとも、食べ物に贅沢は言わないタチだが

今回ばかりは完食できず、半分以上残してしまう。

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いっぱい食べてくれた、トリニダーのニャン

しかも私の場合、食事と同時に、一匹の猫が足元に寄って来た。

よっこらしょと後足で立ち上がり、こちらの膝に前の両足をキチンと添えて

全身を使っての「ちょうだい!」のポーズ。

皿から消えたチキンの半分以上は、この小さな相棒が食べてくれたのだ。

「こんなことなら、.朝食の残りを持って来た方がよかったな」

定番ドリンクのモヒートをすすりながら相方にこぼすと

彼女も「そうだったね」と、激しく同意。

ふと周りを見ると、数組のツアー客がいたが、誰もランチなんか頼んでいない。

たぶんあらかじめ内容を調べており、「ランチは金のムダ」と知っていたのだろう.。

確かに、この食事で1人1200円はふっかけすぎだ。

 

キューバの旅★教訓①

オプショナルツアーにランチは不要!〈特にトリニダーの乗馬ツアー〉

 

それでも、コトがカネで済むなら、どうってことはなかった。

ものの見事に、不安は的中。

静かに、そして確実に、〈ブタの呪い〉が忍び寄ってくるのだった。

 

ではでは、またね。