2017年1月6日(金)ナポリ⇒ソレント⇒アマルフィ⇒サレルノ⇒ナポリ
碧い海と空、輝く太陽と地上の楽園と錯覚するアマルフィの海辺。
『地球の歩き方』(2017~18年版)では、このように絶賛されていた
アマルフィのバス停へと、お昼前に到着したAra-kanふたり。
冬なお眩しい陽射しを浴びて、意気揚々と第一歩を踏み出したのだが・・
――さ、さ、寒い~~っ!!
確かに、お日様が当たっているところは暖かいものの
冷たい風がビュンビュン吹きまくり
ダウンジャケットの合わせ目、襟元、袖口に、容赦なく潜り込んでくる。
こりゃたまらんと、案内所の窓に貼ってあったバスの時刻表だけをすばやく確認。
ダンゴムシのように背中を丸め、海沿いのバス停から
山間に沿って上り坂が続く街の中へと急いだ。
さいわい、街の門をくぐってしまうと、海風が遮られたためだろう
寒さはあっさりとおさまり、快適な環境へと早変わり。
しかも目の前には、迷路じみた細い道にそって所狭しと並ぶ
特産のレモンやオレンジ、陶器、お菓子などの店。
そして、今までどこにいたのかと思うほど大勢の観光客が
三々五々、行き交っていた。
いちおうシーズンオフだったからなのか
そのほとんどが、ヨーロッパ系の、いわゆる「白人」ばかり。
中国を含め、アジア系の人は、ここでは少数派だった。
さすが? ローマ帝国の時代から栄えたヨーロッパ有数のリゾート地だ。
それにしても、結構寒いはずなのに、みなさん、かなりの薄着。
シャツの上に薄手のジャケット、あたりが標準だが
なかには、Tシャツに短パンだけという強者(つわもの)も!
寒さに対する感覚が、明らかに我ら東アジア人とは違う。
プレートのセンスもなかなか
ともあれ、谷あいの川を遡るように、くねくね曲がる細い歩道を進んでいくと.
ほどなくパッと視界が開け、円形?の広場に到着した。
アマルフィのシンボル・ドゥオーモ前に広がる、ドゥオーモ広場だ。
ふと右手を見ると、どこかで見たような面構えの建物が。
おお、これが例の映画の舞台になった教会か。
・・別に作品は観てないんだけどね。
しかし、ファサードの列柱も、縞模様の壁面も、各所の文様も、まんまスペイン。
アランブラ宮殿とかセビリアで見た建造物と、まるっきり同じ様式だ。
ナポリで感じた「スペイン(=イスラム)テイスト」が、さらに色濃く漂っていた。
なーんて、後で資料やガイド本を見れば、もっともらしいウンチクを吐けるけど
実際に目にした時の感想は。
お、きれいきれい。けっこうかっこいいじゃん。
といった程度の、ほぼ脊髄反射のみ。
中に入ったときも、小さな町に似合わぬ華麗さに
――さすがは、かつては地中海に君臨した海洋国家アマルフィだな。
など、「ローマ後の地中海世界」(塩野七生著)の受け売り知識で
〈分かった気になった〉ぐらいが関の山だった。
そのくせ、事前の予習(ガイド本を読む)をサボッていたから
最大の見どころ『天国の回廊』に立ち寄らぬまま、広場に戻ってしまったのだ。
二度と行けないかもしれないのに・・ホンっと、バカは死んでも治らない。
事前にチェックしておいた「紙の博物館」も、門前まで行ったら閉まっていたし。
紙製品の店に入っても、予想より値段がひと桁上で、買わずじまいだったし。
これはもう、リベンジ決定だな。
次はもっといい季節に来て、このあたりで1~2泊してやるぞ。
結局、2時間余りアマルフィを歩きまわったが
増えた荷物は、孫たちに買った2枚のTシャツのみ(この時点で2人目まで登場)。
お腹も減ってきたけど、ナポリで予約した夕食時間を考えると
次のバス(14時15分)に乗ったほうがよさそうだ。
諦めて海岸沿いのバス停まで戻り、やっぱり冷たい風に震えながら待つ・・
が、予定時刻を過ぎても、バスが来ない。
まいったなあ、とボヤいていると、同じバスを待っているらしき東洋人の姿が。
なんとなく目を合わせ、話しかけてみると、予想通りひとり旅中の日本人だった。
見たところ20代後半から30代前半といった感じの男性で
料理修行でイタリアに留学中だとのこと。
今回、休みを利用してアマルフィ観光に訪れ
この先、バスで少し走ったところに予約した宿に泊まるのだという。
でも、互いの状況はそのあたりで打ち止め。
「それにしても、寒いですねー。もっと暖かいと思ったんですけど・・」
と、肩をすくめて嘆き始めた。
まだ我らは.ダウンジャケットを着ているからマシだが
彼は薄手の上着を羽織っているだけ。
背中を丸め、必死に寒さに耐えていたのだ。
それでも、この話題に移ってほどなく、
10分ほどの遅れで、待っていたバスが到着。
我ら三名の日本人を含め、7~8名が、我先にと温かい車内に乗り込んだ。
運転手は、ひと通り乗客を確認すると、少しでも遅れを取り戻そうというのだろう
間髪おかずバスを出発させた。
4つほど先の停留所で降りる男性と、別れの挨拶をかわすと
あとは一路、アマルフィ海岸を東へ。
うららかな日差しを浴びて、のんびりゆったりバスの旅。
・・と行きたいところだったけど、ここらから少しずつ空模様がぐずり始める。
乗車してから、およそ1時間後。
ついに雲間から、ちらちら白いものが落ちて来た。
予想外の雪模様だった。
そして、サレルノ到着予定時刻15時30分.を5分ほど過ぎたころ
なにやら工場地帯のような海沿いの道端で、バスは停まった。
すると、乗客の半分以上が立ち上がり、降りる雰囲気に。
だが、どっちを向いてもサレルノ駅らしき建物は見当たらない。
藁にもすがる思いで、運転手に「サレルノ?」と疑問形単語を投げかけると
「そうだよ!」とばかり、大きく頷き返した。
だったら、降りるっきゃない。
きっと歩いて行ける場所に、鉄道の駅もあるはずだ。
そう自分に言い聞かせ、相方とともに寒風と風花が舞う路上へ。
とにかく、他の乗客たちの後についてってみよう!
すでに小さくなった背中を追って、足を速めるのだった。
ではでは、またね。