遠すぎた「世界三大夜景」 ローマ&ナポリふたり旅 2017.1.3-1.9 3日目(後編) 

2017年1月5(木) ローマ⇒ナポリ

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リニューアル中だったナポリ中央駅地下

キオスクおやじの忠告に従い

ダウンジャケットの下に貴重品バッグを抱え直し

ちょうど停車中だった始発のバス(R2)に乗車する。

直後に満員のバスは発車し、大通りを南西に向かって走り出した。

吊革につかまって車窓風景に目をこらし、〈降りどころ〉を探していると

15分ほどで進行方向左手に、ナポリ湾の水面が広がり

どこかスペインっぽい円柱の双塔をもつ城が、姿を現わした。

すかさず「ここだ!」と、下車ボタンに手を伸ばすまでもなくブザーが響く。

.心配しなくても、乗客の半分以上が下車したのだった。

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       全身から〈スペイン光線〉を放つヌオーヴォ城

てなわけで、ルネッサンス様式の傑作と称えられるヌオーヴォ城の手前から

本格的なナポリ半日観光がスタート。

ムニーチピオ広場~ヌオーヴォ城~サン・カルロ劇場~王宮〈プレビシート広場)と

いずれも外からだけだが、順番に見物していく。

率直な印象は――イタリアというより、スペインじゃん!

というものだった。

さすがはローマと以北とは歴史が異なり

ルネサンス以降、およそ300年?間もスペイン領だっただけある。

歴史的な建造物や広場の雰囲気が、どれもこれも

マドリードやセビーリャなどで見た宮殿や広場と、ほとんど一緒だったのだ。

そこそこ歴史には興味があり

ヨーロッパルネサンス&近代史の本も読んできたつもりだったが

どこまでいっても〈頭の中の知識〉どまり。

実際"現場"に立ってジカに体験しないと

本当の意味で〈分かった〉ことにならないのかもしれない。

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逆光のプレビシート広場

ともあれ.「イタリアとスペインのハーフハーフな雰囲気」が面白く

ろくにガイドブックをチェックしないまま、プレビシート広場でしばらくぼんやり。

そのまま、一番の繁華街といわれるトレド通りに向かったので

目と鼻の先にあったナポリで指折りの名所

「ウンベルト1世のガッレリア」と「卵城」を、あっさりスルーしてしまった。

夕食後、ホテルに戻ってから、「失敗した!!」と気づいたが。後の祭り。

まったくもう、なにやってんだか・・・

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実は海側ばかり見ていたんだよね・・

そんな痛恨のミスには気付かぬまま目指したのは

トレド通りにあるケーブルカー(チェントラーノ線)の乗り場

海の近くまで高台が迫っているナポリには

日本でも「フニクラ」で知られるケーブルカーの路線が何本も走っている。

1日乗車券があれば乗り放題なので、ぜひ体験したいと思っていたのだ。

ところが――乗り場発見! 

と思った次の瞬間、入口に立ちはだかる巨大な鉄柵に行く手を阻まれてしまう。

営業時間は確認済みだったので、ストか、事故か、はたまた臨時休業か。

理由は分からないが、とにかく運行休止なのは一目瞭然だった。

 

やってないものは、仕方ない。

ひとまずケーブルカーは諦めることにして

観光客でごったがえすトレド通りをじゃらんじゃらんすることに。

とはいえ、大好物の「B級店」はどこにも見当たらず

目の届く限り、ブランド物を扱う高級店と、いかにもな土産屋ばかり。

結局ほとんど店には入らず、路上のあちこちでやっていた生演奏を楽しんでいた。

――それにしても、日本人の姿を一度も目にしてない気がする。

イタリア大好きなはずなのに・・ナポリってあんまり人気ないのかな。

「歴史地区」ぐらいしか世界遺産がないから、観光ルートから外れているのかも。

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ついつい「山」が気になる性分なので・・

そうこうしているうちにも、時刻は4時過ぎ。

路上ライブ鑑賞で時間を潰してしまうのは、あまりにもったいないと

今度は地下鉄に乗って、丘の上を目指すことに。

トレド通りの途中に口を開けていたトレド駅への入口を降り

当初ケーブルカーで登る予定だったエリアへと向かった。

のだが、この地下鉄(Metropoliyana)のルートが、妙にぐるぐるくねくね。

おそらく標高を稼ぐため、わざと遠回りさせているのだとは思うが

地下鉄は便利な乗り物(代わりに景観は期待せず)というイメージが強かっただけに

走っても走っても目的地に着かない気分だった。

結局、一度の乗り換えを挟んで、30分以上狭い車両にぎゅうぎゅう詰め状態で

ようやっとPizza Vantitelli駅に到着。

地上に出ると、すでに街にはネオンが。

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分かりやすい?クリスマスイルミネーション

せっかくナポリに来たのだから

世界三大夜景のひとつとも称される「ナポリの夜景」は拝みたい。

そんな希望を胸に、例によってクリスマスイルミネーションが灯る通りをさ迷うが

カトリック国なので1月上旬頃までクリスマスを祝う)

どこにも展望台らしきものは(案内板を含めて)見当たらない。

そのあいだにも、本日のディナーに予約した19時が刻々と近づいてくる。

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             あっという間に日は落ちて・・

うーん・・背に腹は代えられないか。

「夜景」は諦め、ナポリ駅まで戻ろうと地下鉄の入口を目指して歩くと

なんと、そのすぐ先に「ケーブルカー乗り場」の明かりを発見!

しかも今度は、ちゃんと運行している!

きっと修理か何かのために、臨時休業してたにちがいない!

勝手に決めつけ、ホームに止まっていた下りケーブルカーに飛び乗る。

ガタゴト急斜面を降り射ていくと、途中でひと駅だけ停車し、すぐ終点に到着した。

 

よーし、あとはバスか地下鉄でナポリ駅を目指すだけ!

諦めていた〈ケーブルカー乗車〉を果たし、上機嫌で改札口へ向かう足が。

そこで、ハタと停まった。

・・.あれ? なんだか、昼間見た駅とは違うような。

目の前に広がるのは、街灯の明かりもろくにない静かな住宅街。

観光客で賑わってトレド通りの繁華街とは、似ても似つかぬ光景だったのだ。

恥ずかしながら、このとき初めて、駅名と路線名を確認すると・・

駅名Stazione、でもって路線名は「キアイア線」。

そう。ろくに確かめもせず、別の路線に乗っていたのだ。

おまけに、慌てて地図を調べてみると

ここから地下鉄でナポリ駅を目指すのも、意外と面倒臭いみたいだった。

(後で冷静に確認したらそうでもなかったが)

 

しからば、戻るべし!

いま降りたばかりのケーブルカーに乗り込み、もいちど丘の上へ。

そこから地下鉄Pizza Vanvitelli駅⇒Pizza Garibaldi駅(ナポリ中央駅へ直結)とたどり

なんとか予約時間前に、今夜の店「ミミ・アラ・フェッロヴィア」に到着できた。

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多少のゴミには慣れてきた

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こぢんまりして、いい雰囲気の店だった

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隠し撮りで失礼

駅の近くということもあり、周囲はどこか殺伐とした空気がただよっていた。

(実際、街角には巨大なゴミの山がドンとそびえている)

しかし、一歩店に入ると、ちょっと裕福なナポリの家を訪ねているような

リラックスできるアットホームな雰囲気に満ちていた。

せっかくナポリに来たのだからと、

ポルピ・イン・カッスオーラ(小ダコのトマトソース煮)

アサリのパスタなど、魚介類を中心にオーダーする。

で、率直な感想は・・味はいいんだけど、ちょっと油がキツイのかな。

妙に重たく、お腹にもたれそうな予感がしたのだった。なんか、惜しい気分。

それでも、店の人達はみな人懐っこく、とっても温かい。

明らかにローマ以北のレストランよりも、人と人の距離が近い気がした。

おまけに「日本から来た」と聞くと

店のご主人、満面の笑みを浮かべ、一枚の写真パネルを持って来た。

・・そこには、ご主人と記念撮影に応じる、元首相・小泉純一郎氏の笑顔が!

こんな庶民的な店に、たった一人で訪れていたのであった。

さすが、〈変人〉と呼ばれた男だけのことはある。

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ようやく一日が終わる

ではでは、またね。