小鳥の羽音といっしょに歩く道 カッパドキア&イスタンブールの旅 2019.11.28-12.5 3日目(前編)Ara-kanふたり旅

2019年11月30日(土)

 

朝8時30分、2階のこじんまりとしたカフェで

地元の家庭料理が並ぶ、とてもおいしい朝食をいただく。

ギョレメで泊まったのは、Exprorer Cave Hotelという

4~5部屋しかない小さな宿で、おそらく家族経営なのだろう。

おかげで料理ひとつひとつが作りたてで

モチモチのパンと一緒に、いくらでも食べられた。

我らの他に2組ほどしか見かけず

テラス席から奇岩の街並みを眺めつつ

何杯もジュースやコーヒーをお替りして、くつろいでしまった。

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アットホームで居心地のいいカフェ・スペース

さて、今日は100%自由行動の「カッパドキア放浪Day」。

公共交通機関と自らの足だけを頼りに、近郊巡りを楽しむつもりだった。

いちおう午前中は、ローズバレー付近をトレッキング。

午後は、できればギョレメの東にあるもうひとつの奇岩の街・ユルギャップに移動。

そこで食事や街歩きを楽しもうかな・・というゆるーい予定だ。

途中で何かあったら、そのときはそのとき。

いつも結果オーライなので、すっかり根拠のない自信がついてしまっている。

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ホテルにもニャンの姿が

いったん部屋に戻り、もろもろの準備を済ませ

朝10時過ぎ、それぞれデイバックを背負って出発。

幸い、天気は絵に描いたような秋晴れ。

陽射しもなかなか強烈で、夜間の寒さが嘘のようだった。

アプリの地図で位置を確かめながら、北へ向かう道路に沿ってのんびり歩く。

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歩く人のいない道(みんな乗り物に乗っていた )

のどかな未舗装道路に入り、カササギを眺めながら歩くこと30分。

思ったより早くローズバレーの入口にあたるチャウシンに到着

東南に向かって伸びる細い道に入っていく。

いよいよ、カッパドキア・トレッキングの始まりだ。

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所々に立っている素朴な標識

するとさっそく目の前に、いかにも挑戦的なたたずまいの岩山が。

「登れるものなら登ってみろ」といわんばかり。

ならば、受けて立とうじゃないか!

――これでも、昔は南北日本アルプスを縦走した元山男だ。

斜めに駆け上がる山道に向きを変え

小石でザラザラ滑る足元を確かめながら、一歩一歩登っていく。

ところが、日本の登山道のようにきちんと整備されていないらしく

途中で道が消えたり、行き止まりになったり・・

何度もルートを変えてチャレンジすること、たぶん30分前後。

ようやく、ピンク色の岸壁ローズバレーを一望できる頂きを制覇した。

・・といっても、高低差100メートルもないんだけどね。

数分後には相方も到着し、着込んでいたダウンジャケットを脱いで

青空の下、絶景をオカズにひとやすみ。

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鳳凰三山を思い出してしまった

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夕日を浴びなくても十分赤いローズバレー

回りには誰もおらず、静かな山頂を一人(二人)占め・・

と思っていたら、反対側の裾野のほうから大きなエンジン音が迫って来た。

すぐ先の少し低くなった鞍部めざして

四輪バギーの集団(たぶん中国人観光客)が登って来るではないか。

なんのことはない、現地ツアーに参加した団体客たちは

バギーに乗って楽々と〈ローズバレー絶景ポイント〉を、攻略していたのだ。

さらに、その向こうでは、馬に乗った一団が。

みなさん、それぞれ現地ツアーを楽しんでいるんだなぁ。

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四輪バギー軍団、参上

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乗馬は・・・けっこう好きだったり。

でもさ・・ヒネクレ者の愚痴かもしれないけど

こういう気持ちのいい場所は

騒々しい乗り物を奇声を上げて操るんじゃなくて

自分の足を一歩一歩踏みしめて、たどりつきたいと思っちゃうんだ。

 

とはいっても、このあと

Ara-kanふたりが、《夢のようなひととき》を体験できたのは

大半の観光客が四輪バギーや乗馬のツアーに参加して

トレッキングルートが顧みられなくなったおかげだったんだよね。

旅も人生もそうだけど、思わぬところに「塞翁が馬」が顔を出すものだ。

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奇岩の道をレッツ、トレッキング

ともあれ、水とナッツ(ネヴシェヒルの絶品!)でエネルギーを補給。

まったく人影のないローズバレー側の谷に降り

再び、南へと向かうトレッキングロードを歩き出した。

すると・・・

はじめのうちこそ、売店らしき小屋(みんな閉まっていた)をちらほら見かけたが

しばらく足を運ぶうちに、周囲はほとんど手つかずの雑木林と

ときおりニョキッと頭をもたげる岩山(住居跡のような穴が穿たれていた)ばかり。

およそ2時ほどの間、だ~れにも出逢わない静寂の道が待っていた。

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小鳥の羽ばたきが聞こえるたび、立ち止まってしまう

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どの岩にも住居跡が・・

聞こえるのは、風にそよぐ微かな葉擦れの音、遠く近くで交わされる小鳥のさえずり。

何よりも感動したのは、10メートルほど歩くたびに、足元から飛び立つ小鳥たち。

その翼が発する「はたはたはた・・」という、なんともいえない羽ばたきの音!!

相方とふたり、ときどき前後を交代しては

どこか温かいささやかな羽音を愉しむ「至福の時」を満喫したのだった。

 

〈夢のようなひととき〉の後には

得てして〈厳しい現実〉が待ち受けているもの。

今回も、例外ではなかった。

およそ2時間ぶりに、進行方向からの二人連れに出逢う。

我らよりも、ひとまわりぐらい年上だろうか。

アメリカではなく、おそらく北ヨーロッパ人のカップル。

ひと目でトレッキング目的だとわかる出で立ちで

すれ違いざまに軽く挨拶を交わし、スタスタ歩いく。

 

で、気になったのは、彼らがやってきた方向だった。

地図アプリとガイドブックを見比べながら予想していた経路ではなく

ずっと西の方から現れたのだ。

地図をよくよく見直すと、どうやら彼らのルートをたどったほうが

路線バスの通る幹線道路に早く到達できそうだった。

こっちのルートの方がショートカットできるかもしれないな。

歩き始めてから、すでに4時間。

少しでも楽をしたいという下心から、急遽、地図にない道を選ぶことに。

 

・・ま、結果は、例によって例の如し。

炭鉱のボタ山を思わせる小高い山(丘)を、何度も何度も上ったり下りたり。

どこまで行っても、先が見えない。

途中、引き返そうかと思っては、マップの現在地を確かめては

いやいや、少しずつだけと進んではいるぞ。

思いなおしては、また足を運ぶ。

そんなことを繰り返して、あっというまの1時間。

やっとこさっとこ、走る車の姿が見えてきた。

マップをチェックすると

ガイドブックにも載っている「日没鑑賞ポイント」に向かう道の途中。

・・やれやれ。

まったく〈楽あれば苦あり〉を地でゆくトレッキングだった。

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やっと平らな土地に出た・・さすがにヘトヘト

ともあれ、ここまで来ればもう大丈夫。

痛む足を引きずり、さらに10数分南下して

ギョレメとユルギュップを結ぶ幹線道路に、たどりつく。

予想通り、道の分岐点に屋根がかかったバス停らしき小屋を発見。

ユルギャップに向かう側を選び、時刻表でもないかと目を凝らすが

それらしき表示はどこにも見つからない。

「仕方ないね、ここで待ってよう。そのうち来るよ」

まんいち、バスが来なくても、ここからギョレメまでは5キロもない。

いざとなったら、歩いて戻ればいい。

なんとかなるさ。

待つのも歩くのも慣れっこの、Ara-kanふたり。

長期戦を覚悟し、ひと休みしようとバス停に入りかけた、次の瞬間。

またもや、予想外の事態が発生したのである。

 

ではでは、またね。