”バカSF”とナメるなかれ 『レッドスーツ』ジョン・スコルジー 周回遅れの文庫Rock

少なくとも、「スタートレック」ファンにはイチオシの作品だ。

スターウォーズ」とか「エイリアン」を楽しんだ人も、面白がってくれるかも。

とはいえ・・結局は単なる〈パロディ〉でしかないよなぁ。

それも、”悪ふざけの一歩手前”ってヤツでさ。

――ずっと、そう思いながら読んでいた。

 

あらすじ自体は、とてもシンプルだ。

スタートレックシリーズなどをご覧になった方であれば

「ああ、あれね」と分かってくれるだろう。

ストーリーのスリルを高め、観客(読者)をドキドキさせるために

登場したと思ったら、あっという間に殺されてしまう

名もなき〔切られ役〕たちを主人公に据えた物語である。

昔からアニメでも、よく見る場面。

戦闘が始まる直前にひょっこりと顔を出し

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」的な言葉だけを残して

まっさきに死んでしまう、あれだ。

 

本書では、そんな〈永遠の三下〉連中が

〔なぜ主役級の面々が決まってギリギリのピンチから生還し

 その代役とばかりに、自分らペーペーが犠牲になってしまうのか〕

との疑問に駆られ、そもそもの原因を徹底追求。

ある意味、「自らが属する物語世界」を飛び出すことによって

己に課せられた〈必死の運命〉から脱出しようと奮闘する。

しかし、そのカラクリたるや・・

「なんだよ、それ!?」

と呆れ果て、人によっては途中で本を閉じたくなるようなシロモノなのだ。

 

実際のところ、450ページを超える本書を読み始め

残る厚みが5ミリ未満となった370~80ページあたりまでは

当方も、あやうく途中リタイア組になるところだった。

 

 

でも、どうかそこを、ぐっとこらえてほしい。

多少斜め読みになっても構わないから

せめて、終章のⅡまではページをめくっていただきたい。

そうすれば、少なくともSFが好きな人であれば

「なるほど、そうきたか!」と

心の中で手を打ってしまうに違いないのだから。

 

ホンッと、ラストまで読み通して、良かった。

まさか、こんなにも見事なゴールを決めてくれるとは!

さすがはスコルジー

そして、ヒューゴー&ローカス受賞作。

一作目を読んだまま積読(ツンドク)状態になっていた

「老人と宇宙」シリーズを読み返すのが、いまから楽しみだ。

 

ではでは、またね。