マスクをはずし、糺の森で深呼吸  京都の旅 by Goto 2020.11.24-27 Ara-kanふたり旅 1日目〔後編〕 糺の森で夢心地さんぽ

2020年11月24日(火) 14時30分あたり

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ようやく”旅”になった

とにかく、この雑踏から逃れたい。

その一心で、洛中方面へ向かうバスに駆け込んだ。

超メジャー観光地にすっかり懲りた我々が

気を取り直して向かったのは

高瀬川賀茂川の合流部――いわゆる「鴨川デルタ」。

 

四条河原町でバスを乗り継ぎ

「たまこマーケット」の舞台となった商店街の入口にある

葵橋西詰で降りる。

迎えてくれたのは、心地よい川風だった。

ほんの50メートルほど東に

賀茂川と高野川に挟まれた、二等辺三角形の陸地が。

万城目学鴨川ホルモー』でも有名になった、鴨川デルタだ。

 

目に入るのは、眩しい陽射しと、青空。

そして、ギリシャ文字のΛ型に突き出した突端部分には

歩いたり、座ったり、寝転んだり

それぞれお気に入りの時間をまったり過ごす

大学生のグループやカップル、地元の家族連れなどなど。

つい先ほどまでさまよっていた嵐山とは、違う国に来たような

のどかな情景が広がっていた。

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おなじ河原でも、大ちがい

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よっこらしょ、と、ひなたぼっこ

・・やれやれ。

思わず息をつき、船のへさきみたいな突端に向けて下り坂になっていく

その斜面の途中に腰を下ろす。

やっぱり、こういうところのほうが性に合ってるよなぁ。

そんな感じの言葉を相方と交わし

川を横断する飛び石をピョンピョン跳ねながら渡る

元気な女の子を、目を細めて眺めてしまう。

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隠れたバードウォッチングの名所でもある

何をするでもなくたたずむこと、しばし。

すっかりへこたれていた心の奥で、「充電完了」のランプが灯る。

――じゃ、いきますか。

 

元気をくれた鴨川デルタに別れを告げ、そのまま鴨川公園を北へ。

すぐ眼前に、うっそうとした木々の壁が起ち上がる。

京都最古の社のひとつ、下鴨神社の参道・糺(ただす)の森だ。

古代原生林の名残が見られるという。

今回、ぜひとも訪れたいスポットのひとつだった。

 

濃厚な緑の香りを胸いっぱいに吸い込み、いざ糺の森へ。

と、その入口に、小さな神社らしき建物。

境内の中央に建つ東屋に、なぜか若い女性ばかりが、十人ほど。

手許の何か向かって、熱心に筆を走らせている。

興味を引かれ、境内の中に入ってみると・・

社殿の横に設置された棚一面に、数百枚に及ぶ丸い顔の絵が。

なんだこれ?

遅ればせながら、ガイドブックをチェックして、ようやく理解する。

ここは、河井神社。

下鴨神社の第一摂社(分家みたいなもの?)で

女性の守護神・玉依姫命を祀っている。

それが「美の神」として信仰されていることから

絵馬に描かれた顔を自分に見立て、お化粧して奉納すれば

美人になれる!(・・かも)ご利益があるのだという。

なるほど、だからみんな、一生懸命、絵馬の顔を可愛く描いていたわけだ。

今風のメイクバリバリ顔、アニメ顔、大正レトロ美人顔など

人によって「美人」の基準は千変万化。

いずれ変わらぬ〈美しくなりたい!〉という想いの伝わる一枚一枚を

見比べていると、誰かの化粧室に忍び込んでいるような気持ちになってきた。

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みなさん、気合のこもった美人ぞろい

・・どうも、失礼しました。

心の中でペコリと頭を下げ、立ち去ろうとしたとき

境内の右手にたたずむ、小さな庵に気づく。

折りたたみ式の小屋みたいだけど、なんでわざわざこんなところに?

傾げた首の先に、立て札を発見。

文面を読んで、驚いた。

実はこの小屋、「方丈記」の作者・鴨長明の庵を復元したもの。

なんと、この神社こそ鴨長明の出生地だったのだ。

そう――ゆく川の流れは絶えずして、しかも元の流れにあらず。

古典オンチの私ですら覚えている名言の作者と、こんなところでお逢いするとは。

さすがは京都。奥が深いぞ。

 

そして、いよいよ、本日のメイン・イベント。

糺の森へ、おいでませ。

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イチョウの黄色が目に沁みる

・・・・いやいや、すごいすごい。

ホントに、森だったよ。

足元を覆い尽くす、落ち葉の絨毯。

四方八方から立ち上がり、頭上はるかまで包み込む木・木・木。

しかも、まだ夕方前だというのに、人影はポツリ、ポツリ。

だからマスクを取って、思いっきり深呼吸できる。

広さ12ヘクタールの〈貸し切りの森〉。

なんと、贅沢なひとときを味わわせてもらったことか。

 

ここに来れただけで、京都を訪れた甲斐はあった!

――と、断言しても構わないくらい、心洗われるひとときだった。

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気持ちよすぎて、撮影するのを忘れてた・・・

その後、下鴨神社を参拝。

境内にある甘味店「さるや」で、由緒ある申餅を賞味。

さらに北へ足を伸ばし、夕暮れ時の鴨川沿いを散策。

日没後の京都府立植物園で、秋限定のライトアップを鑑賞するなど

いろんな〈京都体験〉があったけど

この日のNo.1は、文句なしに《糺の森》だろう。

 

★Ara-kan旅メモ/京都Ⅲ★

疲れたときは、鴨川デルタ&糺の森で癒されよう。

 

あと、もうひとつ、凄いことがあった。

それは、夕食。

京都を訪ねる2~3週間前から

雑誌やネットなどで「安くておいしい京都の夕飯」を

チェックし続けていた。

その結果、ワシらの〈B級アンテナ〉が目をつけた店のひとつが

四条河原町からほど近い、『食堂デイズ』。

情報によると水木が休みのため、

もし行くとしたら、1日目(火曜)しかチャンスがなかった。

 

なので、植物園のライトアップを鑑賞した後は

もいちどバスで四条河原町へ。

グーグルマップ様々の助けを借りて

路地の2階に『食堂デイズ』を発見したのは、20時あたり。

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文句なしのオススメ!

ネットの人気ランキングで見つけただけあって

明るくこじんまりした店内には、最高齢でも30代かなという若い客ばかり。

このご時世に予約なしという無謀な訪問だったが

悪運強く、テーブル席が1つ空いていた。

メニューを開くと、カルパッチョガスパチョなどの横文字。

スペイン、イタリアあたりの南欧料理がメインらしい。

コロナ騒動がなければ、数日後には訪れていたあたりじゃん。

よし、こうなったら食でリベンジだ!

・・と、勢いよくオーダーしたかと思いきや

この時点では、まだ拭いきれない不安を抱えていた。

そう。「ネットで人気の店」は若い人が選ぶだけあって

〈ボリュームたっぷり〉〈脂っこい〉〈濃い目の味付け〉など

いわゆる「若者好好みの味」になっているケースが、少なくない。

そうでなくても、ほぼ徹夜状態で京都に乗り込み

朝から晩まで移動と観光の繰り返しで、普段よりお腹はバテバテ気味。

果たしてここは、Ara-kanふたりの舌を満足してくれるのか?

ぶっちゃけ、〈気分はギャンブル〉だったのだ。

 

というわけで、明らかにボリューミー&コテコテそうなメニューは避けて

キャベツの前菜、安納芋バター、オムライス、地鶏のお茶漬けなど

お腹に優しそうな料理を選んだのだが・・

最初に運ばれてきたキャベツの前菜を口に入れたとたん

――これ、スペインの味じゃん!

何度か訪れたスペインで出逢った極上の味が、蘇って来たのだ。

すると身体のほうも正直なもので、どん底だった食欲は一気に大復活。

うまいうまいと繰り返しているうちに、完食してしまった。

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撮り忘れるのは、たいてい美味しすぎるとき

こんな風に書くと、スペイン料理専門店みたいだが

2皿目からは、それぞれ別の味わいが楽しむことができた。

味付けも濃すぎたり香辛料で誤魔化したりせず

素材の味で勝負している。

要するに、みんな違って、みんな旨い!

ぶっちゃけ、今まで京都で食べた、雰囲気ばかりの「伝統料理」「名物料理」より

遥かに心に沁みる味わいで、しかも高くない。

もちろん山ほど食べたわけではないが

大人ふたり、アルコール+4品注文して、5000円台。

食事に関しては、あまり期待していなかっただけに

第1日目の『食堂デイズ』との出会いは、めちゃめちゃ大きいものだった。

 

★Ara-kan旅メモ/京都Ⅳ★

 京都で食べるなら、カジュアルな洋食がオススメ

 

ちなみに、ここ『食堂デイズ』。

実は、今年の11月に開店したてのホヤホヤ。

厳しいコロナ渦のなかでも、健気に頑張っている。

店内は若い人ばっかりかもしれないけど

ぜひ中高年のみなさんも、チャレンジしてみてほしい。

少なくとも我らは、次回の京都でも必ず食べに行く気だったりする。

 

ではでは、またね。