「感染差別」は終わらない 『感染宣告』石井光太 周回遅れの文庫Rock

次は読もう、今度機会があったらぜひ目を通したい。

未読本が勢揃いする書棚を眺めては

幾度となく頭の片隅でスタンバりながら

なかなか手が伸びない〈気がかりな一冊〉、なるものがある。

今回やっとこ読み終えた『感染宣告』も

そんな、〈無意識に腰が引ける本〉のひとつだった。

なにせ副題からして「エイズウイルスに人生を変えられた人々の物語」。

楽しい読書体験になり得ないことは、ほぼ確定しているのだから。

 

それでも、やっぱり、言いたい。

読んでよかった。

たぶんこんな内容だろう、と想像していたよりずっと先

斜め上空に突き刺さるような内容だった。

そして、ろくに事実を確かめずに〈知ったかぶり〉を振りかざし

上から目線で世の中を断じる怖さを、改めて認識させられた。

 

かろうじて現在、HIV感染症死に至る病でないことは、知っていた。

だが、一回の性行為によるHIVの感染率が0、1パーセント

つまり千回に一回もの低確率だとは知らなかった。

さらに、血友病患者の命を守るために輸血された血液製剤

すでに感染する危険が明らかされた後も

「安全なタイプ」に切り換えることなく継続使用。

その結果、5千人近い血友病患者の半数近く

およそ2千人をHIVに感染させてしまったこと。

にもかかわらず、危険な血液製剤を投与しつづけた医師は

平然と血友病患者にNIV感染を宣告。

患者やその家族が、あまりの理不尽さに声を荒げると

「我々病院側は国が認可し、製薬会社から回ってきた薬をつかっだけです。

 何も悪いことはしていません。

 ここで騒いでいると、他の患者さんのご迷惑ですのでお引き取りください」

(本書138ページ)など、平然と言ってのけるのである。

しかも、感染リスクを顧みずに血液製剤を使い続けた理由が、ふるっている。

いろいろ理屈をこね回しているが、早い話、次のひと言で要約できる。

 捨てるのがもったいなかった――なんだとさ。

・・怒りのあまり、本を持つ手が震えてしまった。

(いま、この文章を打っている指も震えてる)

 

ホント、つくづく痛感してしまうのだ。

――知らないっていうのは、許される理由にならない、ってことを。

 

いや、ちょっと待て。

こんなシンプルな言葉では終われない。

ある意味、もっと恐ろしい現実が、透けてみえてきたから。

そう。無知から来る〈根拠なき差別意識〉が、いかに感染者を苦しめるか、だ。

 

客観的な判断を放棄し、風評や極論ばかりをインプット。

「感染」への恐怖心ばかりを先走らせ

〈あいつら(感染者)と同じ空気は吸いたくない!〉と

ひたすら排除に情熱を注ぐ”自称非感染者”の皆さま。

・・なんのことはない、コロナ騒動とまったく同じ《魔女狩り》モードだ。

 

これまで何度も繰り返したけど

パンデミック騒動の始まりから半年近く経ち

有難いことに、日本人の死亡リスクはどんどん下がっている。

だからさ、いいかげんヒステリックな《過剰反応》から卒業して

冷静に現実にと向き合おうよ。

高齢者などリスクの高い方々だけはしっかり感染対策を施し

みんなでゆっくり〈変わってしまった世界〉を受け入れていこうじゃないか。

 

地球上の全人類を数ヶ月毎のワクチン漬けにするより

そのほうが、はるかに現実的で理に適った付き合い方だと思うんだけどな。

 

ではでは、またね。