コロナ禍の今こそ「ナウシカ完全版」を! 『風の谷のナウシカ』全七巻 宮崎駿 周回遅れのマンガRock

先日NHK-BSで放送したコロナウイルス関連の番組で

分子生物学者の福岡伸一

「コロナパンデミックをめぐる現在の世界状況は

風の谷のナウシカ』の世界と重なり合うことが多い」

との発言を受けて

自宅に埋蔵していたアニメージュ・コミックス・ワイド版

(1980年代後半~95年にかけて出版)を引っ張りだし

ほぼ四半世紀ぶりに再読してみた。

 

もちろん幸いなことに

毒性の強さ(致死率など)の大前提こそ異なってはいるものの

ウィルス感染を巡り

余りにも絶やすくデマや陰謀論を信じ込み

あらゆる〈犯人〉を自らの外部に求めようとする人々の言動は

背筋か凍えるほど〈ナウシカの世界〉と似通っている。

 

そして、〔腐海の拡大⇒残された僅かな実りを奪い合う人類〕

という絶望的な図式を

現在の世界状況と重ね合わせてみると

ドナルド・トランプを筆頭とする

 

自らの正当化のためにはいかなる嘘も許される

と信じて疑わない愚者たちが

この世界に大手を振って歩きまわっていることも

なにかの巡り合わせのように思えてくる。

 

だって、なにひとつ根拠がないにも関わらず

自分たちは常に正しい。間違っているのは、お前たちだ!

と盲信することを支えに生きる

〈自身の頭で熟考し判断することを放棄した人々〉にとって

このうえなく耳障りのいいキャプションを垂れ流す

これら歪な指導者たちの姿は

まぎれもなく私たち自身が吐き出した《毒》に他ならないのだから。

 

伝え聞くところでは

宮崎駿監督は、いったん発した引退宣言を撤回。

現在、原作つきのアニメ作品にとりかかっているそうだが

はっきり言って、いま、彼が残りの人生をかけて取り組むべきは

中途半端な夢物語で幕を下ろしてしまったデビュー作

風の谷のナウシカ』の完全版を作り上げることではないだろうか。

自らの郷愁と想い出にひたる時間の余裕など、どこにもない。

ご自身が25年前、命をかけて紡ぎ出した魂の叫びを

既存の規制やタブーを超えた《完全版》として世に送り出すことこそ

最大かつ最後の権利にして義務だと、固く信じる。

 

それにしても、いつになったら私たちは

己の裡に確固として存在する醜さや愚かしさと正面から向き合い

すべてを受け入れることができるのだろうか。

いのちは 闇の中のまたたく光だ!! 

――と高らかに宣言した、ナウシカのように。

 

ではでは、またね。